いつも笑顔で、「ラブリー&ハッピーな妄想力で、ピースフルなキャラクターと世界観をうみ出し続けるクリエイター」という紹介がまさにピッタリの季里さん。オープニングタイトルアニメーションを手がけた「ひらけ!ポンキッキ」「ひとりでできるもん!」「天才!テレビ君」、作品を提供した「音楽ファンタジー 夢」など、大学在学中から世の中に贈り出してきた季里ワールドを身近に感じながら育った人たちも少なくないはずです。 話題の美術館で、旅先のギャラリーで、アートに触れる機会も増える夏休み‥‥ということで、季里さんにアートの楽しみ方をうかがってみました。
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CGアートを手がけるようになったきっかけは?
学校の先生か物を作る人になりたくてどちらも学べる大学に行ったのですが、そこで私、絵が下手だということに気付いて。その頃はまだ自分を表現するのではなく、見たものを対象どおりに描くことを評価される時代だったので、デッサンや油絵が「下手だな~」と実感するわけですね。“美術”がうまい人たちに囲まれて「ダメかも」と感じたとき、「人と違う新しい表現を選ばなければ!」と思ったんです。
そこで、デザインに注目しました。デザインというのはあくまでもロジックなので、考え方さえしっかりしていれば絵が下手でも大丈夫。最終的な仕上げは誰かにやってもらえばいいのですからね。
当時、ちょうどコンピューターグラフィックス(CG)が商業的に利用され始めてきた頃で、「コンピューター=万能でスゴイもの」と信じていた私は、コンピューターなら、頭の中でデザインしたものを素敵に仕上げてくれるはずだと思って「これだ!」と。(笑)コンピューターを勉強し、CGを手がけ始めたのはそんなきかっけなんですよ。
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季里ワールドには独特の空気感がありますよね。
常に楽しく幸せな世界を!と考えています。20代の頃は自分が楽しく幸せに思うものを作っていましたが、30を過ぎたあたりから、誰かを楽しく幸せなにするものも作りたいな、と思うようになりました。たとえばゲームだったら、作ったものが世界中の人に遊んでもらえるじゃないですか、そういったことがとても嬉しいんです。
もともと二次元の作品を目指していた私でしたが、大学で参加していたCGグループがコンピューター上にリアルな世界を作る研究をしていたので、平面的なイメージを作りたくても、一旦、三次元に置かざるを得なくて。お蔭様で、イメージと空間との一体感が学べました。
私は、頭で考えたもの、心の中にあるものをすぐに形にしたくなってしまうので、学生時代には「アイデアはいいけど、仕上げが汚いなぁ」って言われたこともありましたが、「仕上げなんて私がしなくてもいいんだいっ!」と心の中でつぶやきながらやっていました。仕上げを考えず、企画に近い形で自分の思い描くビジュアル・イメージを外に出していく、組み立てていく、というやり方だからこそ作り出せる世界があるのかもしれませんね。
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アート作品を観に行くとき、どんな観方をしますか?
そのときの気分で、いろんな見方をしています。まずは、「好き」と「嫌い」の両極端に分けながら、「好き」だけをクローズアップしていく方法。なんで好きなのかを考えたり、好きなものだけをもう1度見ながら「共通性はあるのか?」と考えたりします。
好き嫌いをわけて観るのには理由があるんです。子どもの頃の私は、これもいい、あれもいいと、何でも受け入れていたのですが、ものを作るときにはマイナスになるということに大学生になって初めて気付いて。性格的にはきつい印象ですが、好き嫌いがハッキリしている人の作品ほうが面白かったりするなぁと。だからまず、「NO」といえる自分になろう!と決意して、「これ好き」「これ嫌い」とか、その理由などを言いながら鑑賞するように心がけたら、自分の感覚がわかるようになってきたんです。それ以来、あえて白黒つけて好きなもの、嫌いなものをわけるようになりましたね。
好き嫌いと似ていますが、「これを買うか=自分のものにしたいか」という感覚で観たりもします。誰かと行って、良かったベスト3とその理由をお互いに話すといったこともよくやりますよ。
最近は、音声ガイドを聞くようにもなりました。その作品はどんな風に見るのか、どういった背景があるのか等の情報を得ることで、自分の力だけでは気付かなかったようなことに気付いたりします。時にはガイドの内容に「それ、違うな」と思うこともあったりしますけれど、それもまた楽しい刺激です。
あと、アーティストに合わせた服を着てくる人もたくさんいるので、ファッションを楽しむこともできます。美術館って、ひとつひとつの作品を観るだけではなく、美術館という環境を丸ごと楽しめちゃうと思うんです。自分も人の環境に存在するわけですから、「今日はどんな洋服を着ていこう」と考えてみるのも楽しいですよね。
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アートは人生を豊かにする!?
つい最近、焼き物の作家の方の話を聞きに行く機会がありました。ご自身の作である国宝級のお茶碗を、作ったときのシチュエーションや、どういう作り方をし、何を考えながら作ったかといった“リアルなエピソード”を交えてスライドを見せながら解説してくださったのですが、これはすごく面白いゾと思ったんです。作った人と作ったものとの関係性を共有することで、自分が作り手になったような感覚で見ることができるので、感動みたいなものが全然違ってくるんです。今生きている人には直接話を聞いてみる、亡くなっている人はインターネットなどで歴史的なことを調べてみる、といったことでエピソードを知ると、作品の裏側にあるドラマが見えてくる。ただ作品を観るよりも、より身近で面白く感じるのは当然ですよね。
ですから。若いうちにいろんな「もの」「こと」「ひと」に触れて、感性のボキャブラリーを増やすことをオススメします。今まで自分になかったジャンルを増やすことで、人生の感覚が豊かになっていくと思いますから。
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季里さん
大阪教育大学美術学科在籍中から大阪大学のCGグループに参加し、CGアーティストとして活動を開始。七音社設立以降は、ゲーム制作を中心に活動。『パラッパラッパー』『ウンジャマ・ラミー』ではCGチームの責任者として参加、『ビブリボン』『ライムライダー・ケロリカン』ではキャラクターとグラフィックデザインを担当した。2005年より名前を「松浦季里」から「季里」に変更。NHK『デジタル・スタジアム』のキュレーターを務めたり、子ども向けワークショップを手がけるなど、アートの楽しさを広く発信している。

